企救心理相談室店主の日記

日記、ラジオで聞いた話、メモなどです。

中井久夫「老年期認知症の精神病理をめぐって」

「つながり」の精神病理 中井久夫コレクション2 (ちくま学芸文庫) から
https://www.amazon.co.jp/dp/4480093621/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_U_tQCJEbHP9Z8R5

 

印象に残った言葉をいくつか抜粋したい。

 

◆「変化、経過があるほうがわれわれの知性が働く。」
 「時間的にも空間的にもひろがりと中身とがある対象が好ましい。」

 

◆「古い統合失調症患者には「プレコックス感」が消失すると書いている。おそらく統合失調症の人にとっても、年をとることは悪いことばかりではないのだろう。」

 

◆「リュムケという人は、オランダ人で、(中略)毎日、午後7時半から9時までは来客を待たせてでも二階に上がり、心配な患者に電話をかけ、また予約を取って電話で話をしたということである。(中略)彼の電話に支えられて生きていた老婦人の話も聞いた。半世紀前の話である。」

 

◆「医者とくに精神科医の目標を「できるだけ豊かで無理のない人生をまっとうするように援助すること」と定義すれば、十分はいるものだと思う。」

 

◆「老年の神経症については、(中略)長い歳月の労苦に対する評価が欠けているために(中略)神経症的機構が明らかとなり、急速に治癒していった例を思い出す。」
「引退した役人はよく「あの橋は自分が掛けた」「あの道は自分がつくった」という。」「それほどまでに人は、自己評価の維持のために他からの評価を取り込む必要がある生き物である。」

 

◆「老年期の敏感さは(中略)独自の恥への深い敏感さがある。」

 

◆「老年期認知症の進行を阻止する要因のいくつかは、意識を支える因子、意識障害からの回復の決め手因子と同じである。」「足底からの刺激すなわち起立歩行の重要性である。」「三叉神経からの刺激すなわち噛む運動や喋る運動の重要性である。」親しい者の死去は、耳慣れた音調の消失である。」

 

◆「権謀を中心とする者には個別的・密着的アプローチが有効であり、作話が前に出ている者は、仲間作りが重要」

 

◆「一般に内科医は、人生後半の病は、それまでの生活習慣の総決算であると考え、非常に詳細に既往歴を生活習慣中心に取るが、老年期認知症も、その目で見ると何かみえてきはしないか。」